2012/08/30

早春の国分平野

故郷といって真っ先に思い浮かべるのは・・・。
やはり、城山からの眺望だろうか。

私が小学生のころは、城山へ登る道はまだ舗装などされておらず、
金剛寺から徐々に続く坂道は、子供の足で約1時間はかかった。

3年生の時の担任、H先生は若い女の先生で、
明るくて、歌の好きな先生だった。
そして、私たちをよく教室から連れ出してくれた。
授業で、何度も城山に登った。

春は、ポカポカ陽気の中、
温んだ水溜りに、蛙の卵や、お玉じゃくしを見つけた。
自然観察あり、歌ありの懐かしい課外授業。

頂上に着くと、ふぅーと一息つく。
しばらくして、麓に広がる景色に、わぁーと声をあげる。
南へ広がる国分平野と錦江湾。そして桜島。
その雄大なパノラマに子供ながらに感動したものだ。

特に春の景色は心躍るものがあった。
美しく並んだ田畑は、れんげ草の赤紫、菜の花の黄、若い麦の緑に染まり、
春の三色が織りなす格子模様のように映った。
(緑色は当時の国分の代名詞タバコの葉の色だったかもしれない。)
その先には早春の海がキラキラ輝いていた。
まるで、のどかな素朴画そのもので、
豊かな自然と、人々の営みが、一枚の絵に描かれたようだった。

あのころの城山は整備されていなくても、登って来た者を充分満足させてくれた。
現在は、車で一気に登ってしまう。桜の季節ともなれば大渋滞。

便利になったけど、少し淋しい気もする。
郷愁って、そんなものなのだろうか。。。

ここからの眺めは、悠久の歴史を感じさせる。
南九州を舞台に繰り広げられた私たち祖先の変遷。

大切にしたい故郷の景観の一つ。