2013/05/27

風ノ杜 平安の恋物語

むかし、むかし、大隅国曽於郡国分郷に「こがの杜」というところがあったげな。

ここには、遠い昔の恋物語が語り継がれている。

この地に京の都からはるばる、愛する人を慕って一人の女房がやって来た。

女の名は伯耆局。恋人・藤原成経を追って、薩摩国鬼界ヶ島へ渡ろうと、船が出るのを幾日も待ち続けた。

しかし、願い叶わず、この地で命果てた。里の人は、哀れに思い、一本の木を植え、弔ったそうな。。。


平安末期、鹿ケ谷の変で捕らえられ、島流しになる俊寛らの話は、平家物語で有名である。それにまつわる話のようだ。「長門本平家物語」によると、鹿児島神宮の四社家の一つ桑幡家の清道という人物が、成経に会わせてやると言って騙し、伯耆局を都から連れて来たらしい。

一年後、成経と平康頼は赦免され、俊寛だけを残し、島から戻ってくる。晴れて再会でき、さぞ感動的な場面が語られると思いきや、伯耆局と成経は、歌合せをした後、あっさりと別れてしまうのだそうだ。

どうも、悲しい恋物語の伝承とは違うようだ。

現在、府中方面から松永用水路に沿って上流へと向かうと、田んぼの中に樟が一本立っている。『三国名勝図会』によると、ここが風ノ杜と呼ばれた場所らしい。当時は、この辺りから船が出ていたそうだ。

俊寛たちが、遠い都からここまで来て、さらに鬼界ヶ島まで流されていったことは、事実のようだ。私たちの故郷は、当時から、交通の要衝であったということは間違いない。